M&Aによる株式譲渡のメリット

 では、次にM&Aによる株式譲渡のメリットを考えてみたいと思います。
  メリットは3つあります。

・・・株主の手取額が多い
前項で説明した様に、株主の手取額は清算の場合と比べてM&Aによる株式譲渡の方がはるかに多くなります。では、株式を売却する時の株価はどの様にして算出するのでしょうか。通常株価は「時価純資産プラス営業権」で出す事が日本の中小企業のM&Aでは多い様です。時価純資産は簡単に説明すると下記の様な項目を時価に評価をして算出します。


   【時価純資産】●土地、株式、保険契約、会員権等を時価評価
          ●設備等を適正償却
          ●売掛金、仮払金を回収可能性により評価
          ●在庫を売却可能性により評価
          ●引当金等の適正化

営業権は収益力を中心に成長性やネームバリュー、あるいは投資回収可能性等を加味して評価します。現在の考え方では例えば「30年の歴史と信頼がある”のれん”」とか「研究開発費に5億円つぎ込んだ」という様な事はあまり営業権としては評価されずに、あくまで収益力を中心に評価する考え方が中心になっています。これは、M&Aの専門機関やあるいは金融機関等のM&A部門に頼めば、算出してもらえます。

参考までに簡単な算出方法を述べておきます。あまり専門家の間では使用されませんが、年買法という算定の仕方があります。概ね「利益×3〜5年」の金額を営業権とします。したがって、非常に大ざっぱな言い方をしますと、「時価に引き直した純資産+利益の3〜5年を掛けた営業権を加えたもの」がM&Aの株価になるという事ができます。しかし、M&Aで買い手につく企業は中堅から大手の企業が多く、その場合には必ず監査法人等の買収監査が入りますので金額的にきちんとした交渉が出来る様にM&Aで株式譲渡を決意されたら、初期の段階で専門家に株価の算定を依頼し、株価算定書を作ってもらうのが賢明なやり方だと考えられます。最近は商工会議所でも相談窓口を開いている所もあり、M&Aの仲介専門家を紹介してくれます。秘密保持にも万全を期していますので気軽に相談される事をお薦めします。



・・・社員の生活が安定する
特に、オーナー社長が高齢の場合、社員は将来に対して大きな不安を持っています。又、オーナー社長であるがゆえに、社員の地位の向上も、生活の安定にも限界があります。しかし、M&Aにより親会社の傘下に入る事によって社員から見ると安定雇用や福利厚生の向上、あるいは退職金の明確化、ステイタスの向上という様な事が期待でき、社員の生活が向上・安定する事になります。又、オーナー社長にとっても、会社を清算する場合は永年に渡って会社で苦楽を共にした社員を1人ずつ解雇しなければなりません。これは精神的にも経済的にも大変な負担ですが、M&Aの場合は必要ありません。



・・・会社が存続する
企業は創業者と社員の方々とともにその人生の大半の時間と心血を注いで作ってきたものです。この企業を存続させるか、あるいは消滅させてしまうかというのはオーナー経営者にとって大変な問題です。M&Aによる株式譲渡の場合は会社が残り、さらに大きな企業の傘下に入る事によって拡大、発展していく事ができます。実際にM&Aの交渉をしていて最後に創業者から出てくる言葉は「会社を吸収合併せずに独立会社として残して欲しい」とか「会社の名前をしばらくは変えないで欲しい」という様な要望が多いのです。