三分の二に縮小する労働力

Q.「日本の労働力が三分の二に縮小する」と聞きましたが、その原因と中小企業の対策の仕方を教えて下さい。

A.下記は政策研究大学の松谷教授のご意見です。

 ◆今後、日本の労働力が三分の二に縮小する根拠は?

 日本は戦後、一貫して労働力が増加していく状態にあった。しかしそれが方向転換され、労働力が毎年減少していく状況になる。
 今後の労働力不足を考える場合には2つのポイントがある。1つは、少子化高齢化により、「労働力人口」(働く意志のある人の数)が減るという点。今後の日本の総人口は、みるみる減少していくとみられる。ここから女性の就業率の上昇や定年延長などを考慮しても、2030年には今より20%ちかい労働者数の減少があると予測される

 そしてもう1つは、「労働時間の短縮」ということだ。周知の通り日本は諸外国に比べて労働時間が長い。過去に国際的な非難もあったことから、継続して労働時間の短縮に努めてきた。その傾向は今後も続くだろうから、それを踏まえると実は20%どころか、日本経済として利用できる労働力は今より実質30%以上減少すると考えられる。つまり日本全体の労働力が3分の2ほどに減少してしまうのだ。


 ◆なぜ他の先進国に比べ日本だけが急速に労働力不足が進むのか。

 高齢化のスピードが群を抜いていることが最大の理由だ。それは、日本特有の人口構造が大きく関係している。日本の人口構造には2つの「山」があり、それぞれの山の後には深い「谷」が存在する。他の先進国には日本ほどの起伏の激しさはない。もっと平坦なのだ。「山」を形成するのは、言うまでもなく第1次ベビーブーマー(団塊世代)と第2次ベビーブーマー(団塊ジュニア)。そして団塊世代の「山」が高い分だけ、その「山」が65歳に差し掛かると急激に高齢化が進む。つまり一気に労働力人口が減るのだ。


 ◆深い「谷」はなぜ生まれた?

 日本のベビーブームがわずか3、4年という極めて短い間に終結してしまったからだ。1950年代の初頭から大規模な「産児制限」が行われたことがその背景にある。敗戦による貧困のなかでのやむを得ない選択であったのだろうが、結果として出生率はベビーブーム時に比べ約4割も低下することになった。

 ◆労働力の減少が進むなかで企業はどうすべきか

 人口減少経済のなかで企業が「引き続き今と同じ従業員規模を維持したい」あるいは「拡大路線を続けていきたい」と考えるならば、新卒学生を集めるだけでは困難だ。その場合は主婦、高齢者、フリーターなどこれまで企業があまり目を向けてこなかった人材の活用を視野に入れることも必要だろう。
 ただし、人口減少経済が進むにつれて、企業が引き続き拡大路線を取り続けることは困難だ。労働力の減少にあわせて企業規模を縮小し、従来のような薄利多売の経営をやめ、利益率重視の経営行動にシフトしていくことが求められるのではないか。そうなった場合、労働力の単なる数合わせは不要になる。そこでは、生産力よりもいかに付加価値の高い製品やサービスを生み出していけるかが重要なテーマとなるだろう。そうした状況に対応するためには、今のような新卒の採用を中心とした人材活用のあり方では不十分といわねばならない。他社が真似できないクリエイティブな商品を生み出すために、様々なタイプの人材が必要になる。

 
 ◆そうした流れのなかで、中小企業にもビジネスチャンスはあるか。

 働き方の多様化にともない、人々のライフスタイルが大きく変化していくなかで、大量生産による画一的な商品は今ほど通用しなくなる。小回りの効く中小企業には当然、チャンスがめぐってくる。ただし質の高い人材を確保することがその前提となる。